高齢発症のIgA血管炎に対するミゾリビン、低用量ステロイド併用療法の有効性
最近高齢発症のIgA血管炎を診ることが多く、先週また新たに高齢発症のIgA血管炎の患者が入院されました。腎機能悪化速度も早く、腎生検は抗凝固薬が切れない患者だったので腎生検はできませんでしたが皮膚生検から診断が付きました。
治療に迷っていたところタイムリーにCENに報告が載っていたので読んでみました。
Abstract
高齢発症型IgA血管炎(IgAV)の診断と予後は、その希少性と併存疾患の存在により困難である。さらに、高齢者発症型IgA血管炎の治療法については、まだ議論の余地がある:コルチコステロイドや免疫抑制剤の理想的な投与量は決定されていない。高齢者ではコルチコステロイドの副作用が重篤な転帰をもたらす可能性があり、その有用性とリスクバランスに関するコンセンサスは得られていない。
当院に30日前からの触知可能な紫斑と下腿のpitting edemaの精査のため入院した89歳のIgA血管炎の患者の症例を報告する。
腎生検でIgA沈着を伴う膜増殖性糸球体腎炎(International Study of Kidney Disease in Children (ISKDC) grade VI)を認め、それは予後不良の予後予測因子とされていた.
その結果、明らかな副作用を認めず完全寛解が得られた。腎組織検査の結果に基づいた低用量コルチコステロイドとミゾリビンの早期介入は、高齢発症ISKDCグレードVI IgAVに対して有効な治療法である可能性がある。
Introduction
・ IgAVは通常、小児が罹患すると考えられているが、高齢者のIgAV症例の報告が増えてきており、高齢者発症IgAVの自然史が明らかにされつつある。
・高齢発症のIgA血管炎は予後が悪く11%が末期腎不全、13%が重度の腎不全、14%が中等度の腎機能障害を来す。
・併存疾患やその希少性のため予後予測が難しい。
・高齢者の腎予後はステロイドの積極的な投与で改善すると言われているが、その投与量は定まっておらず、副作用との兼ね合いが重要。
未だ確立されたレジメンはない。
治療経過
有害事象もなく、腎炎は完全寛解した。
血尿30日目には10-19/HPF,170日目には5-9/HPFに減少した。
血清IgA値は28日目に362mg/dLまで低下。
Discussion
・予後予測や他の疾患による腎障害を否定するために腎生検を施行する意義はある。
実際、再発性心内膜炎、MPO-ANCA、全身性エリテマトーデスを伴ったIgAVの報告もある。
・腎生検を行う時期についてはコンセンサスはないが、急性腎不全、ネフローゼ症候群、診断が不確実、持続的な蛋白尿(1g/日以上)がでている場合には生検を行うことが適切と考えられている。
高齢者でも、これらの症例では腎生検が推奨される
・ミゾリビンは、小児期の発症または成人期のIgAV(9~74歳)に有用であることが報告されており、高齢期の発症IgAVの治療にも有用である可能性がある。
以前からIgA血管炎の治療はIgA腎症に準じて行うことが個人的には多く、扁摘が有用であったという報告も散見されます。ただ、やはり血管炎ですのでIgA腎症に準じた治療では効果が乏しい事もあります。
また、なかなか高齢者には併存疾患のためステロイド投与がしづらい事も多いです。